2004 4/21
イラスト 市川笙子さま
文 マリ子


ユーリと同じ14才の時、この物語に出会いました。

「トーマの心臓」は当時の私にとって難解でした。
でも、どうしても解りたくて
特に冒頭の詩の意味を知りたくて
何度も何度も読んだものでした。

そしてそれがわかった時
えも言われぬ感動で
身体中が震えるのを感じました。



物語はライン川に沿った美しいドイツの田舎街にある
ギムナジウムにいざなってくれます。

ユーリ、オスカー、エーリク、主人公の少年を初め
お茶会の上級生やヨハネ館の下級生、
教師のムチもって四十年のブッシュ先生、
登場人物が皆個性的で魅力的です。


食堂や自習室で繰広げられるケンカ。
ヤコブ館の二階端でのお茶会。
二人部屋、六人部屋。
そして図書室と聖堂。


私は地図帳を広げ
ケルン、コブレンツ、ギーゼンと物語に出てきた地を辿りました。
フランクフルト、そして、ウィースバーデン…

彼らに憧れ、恋をし、シュロッターベッツに
生活を重ねることさえ出来た日々。

下ればハイデルベルグ
上ればカールスルーエ
憧れの地をいつか訪れる事を夢見ながら
「トーマの心臓」を片手に教室の窓から眺めた風景。


扉を開くだけであの頃に戻れる。
五感を揺さぶる透き通った空気に会える。
いつまでも変わらぬ永遠に浸れる。


この物語に出会えたことを感謝します。






























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