2003 8/16
イラスト 市川笙子さま
文 マリ子

口づけ


葉の上からこぼれ落ちる朝露、
摘みたての花、
誰一人踏んだ跡のない降り積った雪の原。

神が作った自然の瑞々しさ。
眩しいほどの清らかさ。

透き通るほどの白。
おまえの色。


だがおまえの吐息には色がある。
清冽な白に微かに混じるほどでありながら
男の全てを支配する。

口づけるたびに、くり返すたびに
色づいてゆく…
脈打っていく…


硬くて端正だった薔薇のつぼみが
ゆっくりほころぶ


このひと時にどれほどの想いを込めようとも足りない。

熱を帯び柔らかくなっていく…
もう少し…
そう、もっと魅惑的に…

薔薇が色をかえてゆく
濃くあでやかに…

その魅力に酔いながら
おまえの吐息に溺れながら
もう一度
口づける…






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