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2003 9/14
イラスト 市川笙子さま
文 マリ子
氷の花
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笙子さまから二人のイラストをいただきました。
彼らは本当にヴェルサイユにいたのだと思えます。
「アンヌ、ちょっとアンヌ」
「何ですの？ 伯母さま」
「あの方… どなた？」
「さすが伯母さま、お気づきになると思いましたわ。近衛隊のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ大佐です」
「近衛隊‥ まあ、道理で‥ さすが国王陛下のお膝元のヴェルサイユは違うわね」
「ご存知ですか？ 伯母さま、オスカルさまは‥」
「何？」
「女ですのよ」
「まあ、アンヌ！ 私をからかうつもり？」
「からかっているのではありませんわ、本当よ」
「嘘をついて、いけない子ね」
「伯母さまもヴェルサイユにもう二、三日滞在したらわかりますわ」
「そういえば… ジュリエンヌから聞いたことがあったわ。近衛隊に女がいるって‥ でもまさか本当だとは‥ それに大佐だなんて‥」
「伯母さま、オスカルさまをよくご覧になって。…いかが？」
「息がとまりそうだわ」
「オスカルさまは氷の花と呼ばれているのよ」
「驚いたわ」
「オスカルさまが女と聞いて驚かない人はいませんわ」
「ええ、そうね。でも驚いたのはオスカルさまが女という事よりあの美しさだわ。あんなに美しい人がこの世にいるのね」
「伯母さま、ベルサイユを離れなくなりましてよ」
「そうね‥ 今も信じられないわ。胸が苦しいわ。あ、アンヌ、あの方はどなた？ あの黒髪の‥ アンヌ待ちなさい、彼の名前は何というの？」