2003 7/28
イラスト 市川笙子さま
文 マリ子
同じ場所に…
苦しみは去った… 痛みも感じない…
焼けつくような喉の感触だけが僅かに残る。
瞼の裏に翻る白旗…
泣き叫ぶ声も遠のいていく…
限りない愛に包まれおまえにすべてを委ねた。
いつもわたしの側にあった大いなる愛。
おまえの愛はわたしを力づけてくれる。
おまえを背に感じ、おまえの声を聞きわたしは指揮をした。
それがわたしの生き方だと思ったから…
おまえに会っても恥じない生き方をしたかったから…
あたうかぎり生を振り絞れば
神は願いを聞き届けてくれると信じていた。
わたしはここでアンドレを待つ…
髪に触れる手、優しい手…
わたしは手を伸ばす。
待っていた、この手をこの腕を…
力強くわたしを抱きしめる。
懐かしい声が優しくささやく。
もう、離しはしない。
おまえに導かれ高みへと昇ってゆく。
アンドレ、もう一度誓いを…