Green eyes

「危険なのはあの娘じゃないわ。貴方よ」
 伯母はキッパリと言った。
「どういうことです」
 伯母の言いたいことは何となくわかったが彼は問うた。イレーヌはそれには答えず微かに笑うと席を立ち、たたんだ扇を手にうちつけながらゆっくりと彼の前を歩いた。彼女は何か考え事でもしていたようだが背を向けたまま彼に言った。
「あの娘を貴方の毒牙にかけないで欲しいの」
「伯母さま、随分なおっしゃりようではありませんか」
 彼はやんわりと抗議した。
「あら、褒めたのよ」
 伯母はとぼけた様子で振り返った。
「私がその気になったら落ちない女はいないと?」
 彼は伯母を見おろした。
「まあ、しょっているのね」
 イレーヌは扇を口に当て笑った。
「でも自覚があるのならそうして欲しいわ。ほら、またそんな目をする。その目がいけないの。貴方に出会ってしまったら大変だわ。伯母でさえ手篭めにされそうですものね」
「伯母さまこそ、しょっていらっしゃいます」
「ほほ、冗談よ」
「分かっています」

(本文より)































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