2003 7/14
イラスト ラーキーさま
文 マリ子

まどろみ



ふと気配を感じて目を開ける。
肩に置かれた手はいつもと変わらぬ優しさなのに私の心の中に微かな波をかき立てる。
取られる手から温もりが伝わってくる。
慣れ親しんだ手なのに新たな感覚を目覚めさせるものは何だ。

愛する者を間近に見ながら柔らかなまどろみから抜け出す幸せ。
いつもそこにいるかけがえのない存在。

  こんなところでうたた寝していると風邪をひく。

私は手を伸ばし彼の顔に触れる。
目の前の唇に指を這わせ半分夢心地で首に腕を回す。
その髪の中に手を入れしっとりとした感触を楽しんだ。

  いい夢を見ていたのに邪魔をしたな。
 
髪と戯れていた私の手は捕われ自由を失った。
私は最初に取られた手を解放しもう一度彼の顔に触れた。

  夢の中に入って行けないのが残念だ。

彼の目に小さな光が揺らめき私は唇を塞がれた。
私を包み込む匂い。
それは知り尽くした懐かしいものでありながら別の感覚を五感に訴えてくる。

首筋に感じる唇と微かに触れる舌先の感触が私のからだの奥に熱いものを点じる。
それが体中に広がってゆく感覚に私は自分のからだを委ねた。
私は喉をそらせ彼の口づけを受けた。
からだを支配する疼きに素直になりたい。

私は外側に向けていた顔を彼の首に添わせた。
漆黒の髪が顔を被い視界を遮る。



規則正しい息使い、膝に置いた本。
椅子に座ったままうたた寝しているお前。
肩に手を触れそっと起こそうとした。
うっすらと開けられた瞳。
お前に手を触れ普通でいられないと今さらながら悟った。
伸ばした手が俺を試すかのように顔に触れる。

夢を邪魔したとお前は言う。
お前の心を一時でも占領していた夢にさえ俺は嫉妬する。

僅かに背を反らせ上向いた顔は男から理性を奪い去る。
首に回し髪の中にまで入りこんだ手は誘っているかのようだ。

俺はお前の顎に手をかけさらに上向かせた。
貪るように唇を求めても首筋に唇を這わせてもお前は拒まない。
愛を告げられ至福の只中にいながら俺の欲望はとどまる事を知らない。

反り返った白い喉を見ながらその先に続く肌を渇望する。
俺は耳元でお前の息使いを聞きながらすべらかな肌に口づける。
顎に手をかけお前を押さえつけながら自分の中の制御できないものをも押さえつける。
かぐわしい吐息を塞ぎたいのか飲み込みたいのか俺はお前に口づける。

































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