2003 3/9

現(うつつ)の夢




熱い貴方の眼差しは
私を通り越し、

優しく触れる其の唇は、
私を傀儡と気付かせる。

貴方の幻影の恋人。

気が付けば、いつもそう…もう独りが
貴方と愛を語っている。

気付いてしまった
思いがけない事実に
驚愕し、怯えながら、
貴方に抱かれ
愛は私にあるのだと
貴方を強く抱き締める。

其れは現の幻。
ひとときの夢。

貴方に抱かれていながら、
幻を抱く貴方の心。
私はただ、
遠くから眺め
仮面を被る。

傀儡。
人形。
哀しい言葉が、
何度も浮かんでは
消えていく…。

優しく、
軽く、
時には情熱的に
私に触れる貴方の指、唇。

白い頬、
細い項、
そして鎖骨は、
貴方が、触れ、
ほんのり紅く色付くのに…、
心はただ凍てつくばかり。

誰か居る
誰が居るのか…

まるで
凍てつく心の氷片に、

少しずつ、
深く、確実に、
切り裂かれるような私。

貴方が、私に触れる度、
貴方が、私を求める度。

触れる唇、
弄る掌
慣れた指に、


貴方を感じ、
心が紅い血を流す

肌を紅く染めるのは、
唇なのか、
心の叫びなのか

愛しているのに、
貴方だけが欲しいのに、

切り裂き、抉り取られる私の愛は
此の先一体何処へ行き着くのか。

救いを求めて、伸ばした腕が
貴方を擦り抜け
空を掴む。


白い絹の上、
二人で愛しさを抱いて、
暖めあったのは…もう遠い昔。

今は…、
貴方の瞳が、孤独へと突き落とし、
貴方の優しさが、裏切りを確信させる。

貴方の後ろの幻影を、
私は、切り裂く儚い夢。

私が握る短剣は
一体誰を生贄にすればいいのだろうか。


変わってしまったのは貴方の愛。
変わってしまったのは二人の時。

無くしてしまったものの大きさに
私は震え、
祈りを捧げる。


其れは神に祈るのか、
闇に祈るのか

如何か愛が
戻ってきます様にと…。






「再会X」に寄せて真織様が素敵な文を送ってくださいました。
フロランスの切ない心情が溢れて胸が痛くなります。

人を愛することは喜びだけでなく時には苦しい時もある。
愛するあまり狂気におちいることもある。
愛のかたちはさまざま…

愛に翻弄される人間の儚さを感じさせてくれます。
真織様、ありがとうございました。














































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