2003 9/12
文 まめやっこさま
イラスト 市川笙子さま

口づけ


初めておまえの口づけを受けたのは
・・・そう、あれはもうずいぶん昔のこと。
おまえの気持ちに気付いてさえいなかった
愚かなわたし・・・

二度目に口づけられたとき
わたしはおまえを激しく拒んだ。
怖い、と思った、ただ怖かった・・・

三度目・・・
おまえを欲しいと思っている自分に気付いたとき
ただもうおまえの胸に飛び込んだ。
なにも考えられなかった・・・。

おまえの胸はこんなにも広く深くあたたかいものだったとは!
わたしのすべてを熔かしてしまう。
あの日から
幾度口づけを交わしただろう・・・

愛する者に愛される歓び。
それよりも。
おまえは本当にわたしだけのものか?
おまえの気持ちに報いてこなかったわたしは
おまえに愛されるに値するのか?
その疑問のほうが大きくなるのに
そう時間はかからなかった。

おまえがそばにいないときは、
雨にうたれた子犬のように術なく怯えふるえている。
見つけたらすぐさま抱きしめてほしくて、
そして口づけてほしくて、
名を呼びおまえを振り向かせる・・・

こんなわたしがおかしいか?
それを問う唇はおまえの唇に塞がれて
いつも・・・言葉にならない。

もう数え切れないくらい交わした口づけ
でも
その度ごとにちがう。
安堵と狂瀾が切なくせめぎあう・・・

求めた以上のものを与えられて
戸惑いながら、
決して満足することはない。

さらに激しい渇きにわたしを駆り立てる極上の媚薬

もう耐えられない、
ワインにひと雫おとされただけの媚薬では!

いとしい男性(ひと)よ。
今宵は心ゆくまで
おまえという媚薬を飲み干したい!

貪婪におまえを求める・・・。
おまえの唇を
そして その先を・・・




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